短歌のあれこれTwitter上アンケート2019 / 結果と考察
調査期間:2019/8/8〜8/15 回答人数:273人 
8月中旬に行ったアンケートにお答えいただいた皆さま、ご協力本当にありがとうございました!
少し時間がかかってしまいましたが、集計結果と考察を簡単にまとめておきたいと思います。
比較用の過去調査結果はこちら→ 2013年結果2015年結果
◆まずは基本情報
図1:所属について
6割強が「無所属」という構成は2015年とほぼ変わらない結果に。結社は2015年の結果より6%ほど数字が増えていますが、ざっくりとした割合という意味ではここ数年ではほぼ変化なしと考えてもよいでしょう。結社所属と答えた人の結社内訳については、未来(23人)・塔(18人)・短歌人(7人)・かりん(7人)の順で多い結果でした。ネット上に未来と塔所属の人が多い結果は2013年から変化なしです。同人誌と学生短歌に所属と答えた方についてはそれぞれ23人と8人と少なかったため、以下のデータは誤差も大きく参考程度にご覧いただくのがよいかと思われます。
図2:所属ごとの男女構成比
どの所属においても6割前後が女性、残りが男性という結果に。2013年のアンケートでは「男女比=1:2」という結果だったことを考えると少しだけ男性の比率が増えている気もしますが、無所属では下回っているので「男性が増えている」と断言できるほどの結果ではなさそうです。
図3:所属ごとの年齢分布
先入観として「結社=高年齢層」というイメージがありましたが、今回の結果上では無所属と結社でほぼ変わらない年齢分布に。ただこれは、アンケート自体に「Twitter上」というバイアスがかかっているためと考えるのが妥当でしょう。
図4:所属ごとの歌歴分布
1年未満から20年以上まで満遍なくいる無所属に対して、結社所属の人の方がやや歌歴が長い人が多い傾向が見られます。意外だったのは無所属で歌歴10年以上の人が2割もいること。2013年の調査では「無所属の7割以上の人が歌歴5年未満」だったことを考えると、結社に入らなくても短歌を継続できる環境がここ10年でかなり整ってきているのではないかと推察できます。
◆短歌活動の実態について
図6:普段作品を発表している場所
前回調査からの大きな変化は何と言っても「うたの日」の盛況っぷり。2015年の調査結果では無所属の人が多く集う歌会サイトという印象でしたが、この4年で無所属の人だけでなく結社歌人も参加している状況が見て取れます。また、「ネットプリント」を活用した活動が活発に行われるようになったことと、無所属の歌人で「新聞歌壇」に投稿する人の割合が増えたのも顕著な変化と言えるでしょう。さらに、「その他」の項目が上位に挙がっているのも気になります。テクノロジーの進歩により個人レベルでさまざまな取り組みができるようになったため、短歌の発表の仕方にも多様性が生まれており、限られた選択肢ではカバーしきれない活動の場が生まれているということか。この傾向はますます強まっていくように思います。
図7:よく見る短歌メディアについて
短歌研究や角川短歌といった短歌総合誌に目を通す結社所属の人と、それらにはほとんど興味を示していない無所属の人という分かりやすい結果に。その中で、どちらの層からも高い支持を集めている短歌ムック「ねむらない樹」は新しい短歌メディアとして注目されていることが伺えます。そして、こちらの結果でも「うたの日」に人が集まっている様子がわかりますね。学生短歌所属の人が「さんばし」をチェックしていたり、前述のとおり無所属の人が新聞歌壇をチェックしていたりと、所属ごとに少しずつ異なる特徴も見られるようです。
◆結社について
図7:結社知名度
結社所属の人の結社知名度はさすがの数字。無所属の人からの知名度では「塔」、「かばん」、「短歌人」の3結社(「かばん」は同人誌ですが)が7割を超えている状況に。個人的な感覚では「未来」の無所属層への知名度がもう少し高い数字になるかと思っていましたが、6割を切っていたのは意外でした。
図8:結社に入った理由と入会時歌歴
結社所属の人に聞いた「結社に入った理由」。短歌を上手くなりたいというのはもちろんですが、自分の好きな歌人がいるという要因が決め手になることが多いようですね。これはこれまでの調査とも大きく変化はない項目でした。入会時の歌歴は3年未満で入る人が6割以上。3年〜7年の歌歴の人よりも7年以上たってから入る人が多いのは面白い傾向だと感じました。
図9:結社に入らない理由
逆に、無所属の人に聞いた「結社に入らない理由」。一番多く回答された「いまの環境で十分満足だから」は、上記の結果とも合致している感覚でしょうか。歌会をしたいなら「うたの日」で。投稿なら「うたらば」や「新聞歌壇」などで。個々に作品を発表するなら「ネットプリント」で。自分なりに短歌の楽しみ方を見つけて満足している人が無所属層に半数近くいることは短歌の世界の今後を予見する意味でも留意すべきポイントかもしれません。
◆まとめ
ここ数年で生まれた「場」の変化がそのまま結果に表れた印象でした。数年前に日本各地で巻き起こった超結社歌会ブームは歌会はもちろんその後の親睦会などで無所属の人と結社の人が交流する場としても機能していたように思いますが、それがひと段落して「うたの日」で歌会を楽しむ人が増加することで無所属層と結社層の結びつきが再び弱まるのではないかと少しだけ懸念されます。メディアの移り変わりと歌人の意識変化についての考察は某所できっちり書きましたので、またどこかで発表させていただきますね。
調査へのご協力、本当にありがとうございました!また数年後に、よろしくお願いします。

2019.10.24
田中ましろ拝